ながらの座・座

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ワークショップWorkshop

佐久間新による3回シリーズのワークショップ・プログラム

琵琶湖を身体で感じるワークショップ「身・水・湖─ゆらぐ境界」
令和元年度 滋賀県「美の滋賀」プロジェクト推進事業

2019.10.05(土)・10.27(日)・11.17(日)お知らせ, ワークショップ, 主催イベント, 記録・レポート

琵琶湖を身体で感じるワークショップ「身・水・湖─ゆらぐ境界」

このプログラムは、「美の滋賀」の源泉ともいうべき身近な「水」をテーマに、水や湖を感じながら身体を動かし、最終回にはダンスや音楽を創作し、発表します。
また、佐久間新とゲストミュージシャンによる今回のプロジェクトで着想を得たダンスと音楽の公演を、第3回の第2部で行います。(詳細は随時hpでお伝えします)

2019年
10月 5日(土) 14:00〜17:00頃 第1回 水を感じるボディワーク
10月27日(日)  9:30〜17:00頃 第2回 湖を感じるダンスピクニック
11月17日(日) 10:00〜16:00頃 第3回 小さな水と大きな水のパフォーマンス

会 場
・第1回・第3回:ながらの座・座
・第2回:琵琶湖岸・西の湖周辺など(近江八幡駅集合・解散)*いつもと会場が異なります

参加費(ワークショップ)
・第1回・第3回:2,500円
・第2回:4,500円(移動費・昼食代含む)
・上記、3回通し券:8,000円

定 員
 各回20名

申込み:下記いずれかの方法でお申込みください。
    ①お問い合わせフォームより申込みください。
     メッセージ欄にご希望の人数も合わせてご記入ください。
    ②FAX 077-522-2926
     氏名/参加希望日時・人数/連絡先を明示してお申込みください。

主 催:元・正蔵坊と古庭園を楽しみ守る会(ながらの座・座)
    〒520-0035 滋賀県大津市小関町3-10(地図
    Tel&Fax: 077-522-2926 Mobile: 090-8576-7999(橋本)
後 援:滋賀県 滋賀県教育委員会 大津市 大津市教育委員会 文化・経済フォーラム滋賀
特別協賛:中山倉庫株式会社・滋賀石油株式会社
協 賛:あさ ひる 夕ごはん 豆藤

☞チラシ:PDFファイル [879.8 KB]

琵琶湖を身体で感じるワークショップ「身・水・湖─ゆらぐ境界」

Special Report

佐久間新の琵琶湖を身体で感じるワークショップ(第1回)

身・水・湖ーゆらぐ境界
竹岡寛文

ばしゃばしゃばしゃ、かんこーん、ちゃぽんちゃぽーん・・・
普段は静寂に包まれている座・座の庭が今日ばかりは少し騒々しい。池の鯉たちも何事かと身を潜めている。

ながらの座・座ではこれまで音楽公演を中心にプログラムを展開してきたが、2019年の新たな試みとしてジャワ舞踊家の佐久間新を迎えて3回シリーズの「琵琶湖を身体で感じるワークショップ」を実施することとなった。きっかけは2018年に開催された「徹夜の音楽会」。この時の佐久間のダンスに心を震わせた座・座の主宰者である橋本敏子が、佐久間に企画を持ちかけたことからはじまった。

Banyu Miliについて解説する佐久間3回シリーズのワークショッププログラムは、水が大きなテーマとなっている。佐久間によるとジャワ舞踊では"Banyu Mili(水が流れるように)"という教えがあり、それこそが踊りの真髄だという。当然3回のプログラムで体得できるわけはないが、日常、あまりに「身近」になりすぎた水に焦点をあて、またその(身近の)核でもある「身(身体)」に意識を向けてワークショップを展開し、ある意味で自分たちの生きる世界を感じるためのトレーニングのような機会となる。ダンス経験者やそもそもダンスに関心を持っている方はもちろんのこと、普段はダンスと縁遠い人にも参加してもらえたら...、そうした思いで広報周知や宣伝を心がけてきた。結果、初回のワークショップには小学生から年配の方まで様々な来歴をもつ15名の方にご参加いただいた。

ときほぐすー身体との対話

第1回のワークショップは、今回のシリーズワークショップのイントロダクション。ジャワの音楽が流れる座・座の畳の上で、首を右に左にゆっくりと傾ける。次に前後に傾け、さらには胴体を傾け、そして徐々に身体全体を動かしていく。首から胴そして肩から腕と身体のパーツの境界を感じながらじっくりと体をほぐすように、そして普段以上に身体を意識的に操り、ひとつひとつの動きの中で「どこまで曲がる?」「こうしたら力が入る」など確認をするように、各人自らの身体と対話がはじまる。途中、ニワトリやクラゲのような動きに時折笑いも起こり、いつのまにか身体とともに会場の空気もほぐれていた。

そうしていよいよ水を使ったワークがはじまる。まずは少量の水が入ったペットボトルを寝かせた状態で両手に乗せて揺する。ちゃぽん、ちゃぽんと音を立てて水が動き出す。最初に小さな力を加えたのは自分だが、それを受けて動き出した水の慣性の力やペットボトルの容器にぶつかって行き場を失った水が反対方向に動き出すエネルギーが手に返ってくる。水の動きに手の動きをシンクロさせ、タイミングよく動かすとちゃぽんと音を立てる。意識を集中させているうちに、つい夢中で時を忘れる。いつまででも飽きずにやっていられそうな感覚。参加してくれた小学生の子どもたちも真剣そのものだ。日常生活の中では排除されがちなこの生産性のない時間がどれほど豊かなものか「身」をもって感じる貴重な体験だった。

Banyu Mili ー水が流れるように

頭上の水に意識を集中させて

続いてペットボトルを頭に乗せる。先ほどまでは意図的に水を動かしていたが、今度は水を止める。しかし、少しでも頭が傾いたり、不用意に動けばいとも簡単に頭の上からペットボトルは落下。その制約の中で立ち上がり歩いてみたり、みなで輪になって手をつないだり。やっている参加者は頭の上のペットボトルに集中して歩いているだけだが、一歩引いて眺めてみると不思議と舞踊になっている。頭上の水を止めようとすれば、自然と身体は水のように滑らかに動く。まさに"Banyu Mili"である。

ペットボトルを身体に乗せて1本ずつ落とすそれから、頭以外のいくつか別な部分にもペットボトルを乗せて動いたり、2つのグループに分かれてそれぞれに選ばれた1人にどれだけ多くのペットボトルを乗せることができるかのチャレンジなどペットボトルを使ったワークは続き、どんどん水と親しんでいく。そして、いよいよ舞台は庭の池へと移っていく。

大人も子どもも水とたわむれる池の水は先ほどのペットボトルに閉じ込められた水とは違い、解放されている。むろん池の水をこれまでそんなふうに見たことはなかったわけだが、ずいぶんと水が自由に見える。そこで、次は水に直接触れて音を出す。心地よい秋の空気の中、池の水面を手や足で静かに叩いてみたり、かき鳴らしてみたり、各々に水との関わりを深めていく。さらに木や金属の鉢を水に浮かべるとあっという間に座・座の見慣れた池は大きなドラムセットのように音を奏ではじめた。参加者それぞれが思い思いに発する音は、決して整然としたものではないが、その場の時空にまるで溶け込んでいくように、どこか心地よい。

身体の原体験を呼び覚ます

あっという間の3時間ワークショップ終了後に参加者からも聞かれた「童心に戻った感覚」は、もしかすると身体のもつ原体験との再会だったのかもしれない。そして、今回参加した子どもたちの身体の原体験となっていくのだろう。

フライヤーのリードテキストにも書いたが、都市生活化の進む昨今の暮らしの中で、現代人の感覚器としての身体は気づかぬうちに鈍化している。季節のうつろいや風・水の機微を感じ、自然に親しんできた琵琶湖の周辺に暮らす人びとも例外ではない。佐久間は会のはじめに3時間のワークショップは短いといった。聞いた時には「そうかな」と思っていたところもあったが、終わってみると本当にあっという間。身体の使い方が変わると時間の感じ方もこんなに変わるものかと驚かされた。2回、3回へと続くワークショップで身体がどのように変化していくのか、さらに楽しみだ。