古庭園・大人ライブ Vol.13 灼熱のブラームス
2013.07.21(日)14:00〜/17:30〜(1日2回公演)【お知らせ, 主催イベント, 大人ライブ, 記録・レポート】 sold out!!
2013年 7月21日(日) 14:00開演(13:30開場)/ 17:30開演(17:00開場) ※1日2回公演
出 演:佐藤一紀 谷本華子(ヴァイオリン)
中田美穂 尾池亜美(ビオラ)
金子鈴太郎 平野朝水(チェロ)
吉田誠(クラリネット)
定 員:30名(各回)(完売につき両公演とも申込み終了しました)
参加費:3,000円
会 場:ながらの座・座
〒520-0035 滋賀県大津市小関町3-10(地図)
Tel&Fax: 077-522-2926 Mobile: 090-8576-7999(橋本)
☞チラシ:PDFファイル [4.5 MB]
会 場:ながらの座・座
申込み:下記いずれかの方法でお申込みください。
①お問い合わせフォームよりお申込みください。
メッセージ欄にご参加人数も合わせてご記入ください。
②FAX 077-522-2926 氏名/参加プログラム名/日時/連絡先/人数の記載必須
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主 催:一般社団法人文化農場(ながらの座・座)
後 援:滋賀県 滋賀県教育委員会 大津市 大津市教育委員会 文化・経済フォーラム滋賀
特別協賛:中山倉庫株式会社 滋賀石油株式会社
晩秋の雰囲気がよく似合う、熟成された赤ワインのようなといわれるブラームスの室内楽。
これを夏にする!しかも六重奏とクラリネット五重奏で。これぞ座・座的プログラム。
おなじみのカルテットメンバーに、世界で活躍中の弦楽器奏者二人とクラリネットの若き名手が加わった熱い時間をご一緒に。
Special Report
今回、びわ湖ホール前館長の井上建夫さんがライブレポートを書いてくださいました。
130730「灼熱のブラームス」レポート 井上建夫
「クラリネット五重奏曲ロ短調 作品115」
「弦楽六重奏曲ト短調 作品36」
7月21日の「ながらの座・座」は『灼熱のブラームス』だが、この日もほとんど灼熱の日差しである。若干雲はあるものの、ともかく風がない。
会場(元・正蔵坊)のお庭に面した座敷の中央に5人または6人の奏者が椅子に掛け、両側に聴衆が20数人ずつ座る。奏者と聴衆がこんな至近距離にいることは普通の演奏会場ではまずないことだ。現代のコンサートホールでは、楽器から発する直接音と会場の壁や床、天井からはね返る間接音がブレンドされて聴衆に届く。ブレンドの具合がそのホールの個性であり、音響の優劣でもある。ともかく演奏された曲は、ホールの許す最善の音響で会場の椅子に座っている聴衆に届けられる。
だが、ここでは全く違っている。奏者たちが出した音が届けられるのを待つのではなく、まさに音が創られ、奏者たちが音楽として構成しようとしているその場に立ち会っているのだ。音は音楽の響きとして届くまえに、線的な断片として聞こえ、それを音楽の構造として構成するのは奏者たちと同程度に聴衆の役割である。各奏者の立場になりきることも可能だ。自分の一番近くにいる奏者、例えば第一チェロ奏者として、アンサンブルに加わる体験をすることも容易なのだ。
レストランで例えてみれば、テーブルにつけば、料理が運ばれてきて、あとは食べるだけだが、ここでは、厨房に入り込み、食材が切られ、焼かれ煮炊きされるのをすぐそばで見ながら、お皿は自分で用意して、できあがったものを盛り付けてテーブルまで自分で運び、そして食べる、といったところである。
さて、演奏曲目は上記ブラームスの2曲。クラリネット五重奏曲は、作曲者58歳の作品で、ブラームス晩年の傑作として有名な曲だが、灼熱の時期への遠い記憶といった趣だ。全曲を通して旋律線はなだらかで、5つの楽器が織りなすテクスチャは密度が濃い。その中でクラリネットの音色が曲を先導していくが、第二楽章の即興的で幾分ジプシー風のフレーズ以外は、他の弦楽器から突出するのではなく、4つの弦楽器と平衡を保っている。
対して弦楽六重奏曲第2番は、31、2歳の頃の作品で、これは灼熱の記憶が生々しい作品だ。「アガーテ」と呼ばれることのあるように、ブラームスが婚約したものの、結局結ばれることのなかったアガーテ・フォン・ジーボルトの名前を第一楽章の名前をメロディーに音名で刻み込んでいる(AGATHE=ラソラシミ(Tは音名にないのでシの上でDレが鳴る))。弦楽六重奏曲の第1番もそうだが、ブラームスの若々しい情熱があふれていて、3拍子で息の長いメロディーを歌う第一楽章から十六分音符が活発に走り回る8分の9拍子の第4楽章まで、全体にダンス風の楽しさが溢れていて、これはほとんどが幸福な記憶の連続と言ってもいい。
そして、この5人ないし6人の奏者たちは、常設の弦楽四重奏団のような緻密なアンサンブルではなく、各奏者が伸び伸びと思い切った演奏を繰り広げて、大きな音楽をつくることを志向しているようだ。そのためにここ旧正蔵坊で1週間合宿状態での練習をしたとのこと。弦楽器はガット弦を使用し、現代のコンサートホールの聴衆とは別の聴衆を求めようとしているのだろう。ガット弦はクラリネットの音色と美しく融合した。
アンコールは弦楽六重奏曲第1番の第二楽章。攻撃的に始まった第一ヴィオラによるニ短調のテーマが先導する変奏曲はブラームスの灼熱を伝えた。
アフタートークには奏者にも聴衆にも安堵感と心地よい疲労感があった。今日の2回目の公演でしかもほとんど灼熱の日だったからそれも当然だろう。そして、これまで名前がなかったこのアンサンブルの名称が発表された。「アンサンブル座・座」(弦楽四重奏の時は「座・座カルテット」)。
継続的で充実した活動が期待できそうだ。
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撮影:キタムラアキラ(写真・動画共)