ながらの座・座

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大人ライブLive & Performance

古庭園大人ライブ VOL.37

Ensemble ZAZA 2016コンサート「消された声」

2016.11.19(土)・ 20(日)お知らせ, 主催イベント, 大人ライブ, 記録・レポートsold out!!

Ensemble ZAZA 2016コンサート「消された声」

2016年11月19日(土) 14:00 公開リハーサル/18:00 開演(1回公演、開演は30分前)
2016年11月20日(日) 14:00/18:00(2回公演、開演は30分前)
公開リハーサル・公演共すべて完売しました

出 演:Ensemble ZAZA
    佐藤一紀 谷本華子 中田美穂 伊藤亜美 金子鈴太郎 平野朝水 吉田 誠   
プログラム:当日一部変更する場合があります
    F・メンデルスゾーン  シンフォニア第3番ホ短調
    P・ヒンデミット    クラリネット五重奏曲 Op.30
    E・W・コルンゴルト  弦楽六重奏曲二長調 Op.10

会 場:ながらの座・座                               
定 員:各回 40名(公開リハーサル:定員20名・要予約・参加費500円)
参加費:4,000円(前売)4,500円(当日)公開リハーサル・公演共すべて完売しました
    *未就学のお子さまの参加はご遠慮ください。

主 催:元・正蔵坊と古庭園を楽しみ守る会(ながらの座・座)
後 援:滋賀県 滋賀県教育委員会 大津市 大津市教育委員会 文化・経済フォーラム滋賀
助 成:公益財団法人朝日新聞文化財団 ・全国税理士共栄会文化財団

☞チラシ:PDFファイル [1.4 MB]

Ensemble ZAZA 2016コンサート「消された声」

座・座5周年を記念するプログラムです。
現代社会にある人種や宗教の対立から争いが絶えないものに対する音楽家たちの向き合い方、考え方を芸術的な観点から示した作品をとりあげます。時代との社会的関係性を探る意欲的な取組み。ご期待ください。

Special Report

『消された声』が語りかけたこと
2016年12月20日 佐藤千晴(フリージャーナリスト)

「ながらの座・座」5周年記念シリーズはEnsemble Zazaが締めくくった。座・座の核であるZaza Quartetにクラリネット吉田誠、ヴィオラ伊藤亜美、チェロ平野朝水が加わっての室内楽。『消された声』をテーマにナチスドイツに迫害された作曲家を特集した。

 これまでも『灼熱のブラームス』(2013)、『黄昏の音調』(2014)、『ドイツ浪漫の光と影』(2015)と、毎回テーマ性のあるプログラミングだったが、今回はひときわ刺激的だ。が、日本で一般にはあまり知られていない作曲家の、知られざる室内楽特集に反応する人がどれだけいるだろうか。心配でもあった。
 杞憂だった。11月20日午後2時開演の部は座る場所を探すのに一苦労するほどの盛況。縁側で聴くことにする。

 今回取り上げられた3人の作曲家はナチスから「頽廃音楽」のレッテルを張られ、演奏を禁じられた。フェリックス・メンデルスゾーン(1809〜1847)とエーリッヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト(1897〜1957)はユダヤ系であるがゆえに、パウル・ヒンデミット(1895〜1963)は前衛的な音楽を書き続けたゆえに。ヒンデミットとコルンゴルトはアメリカへの亡命を余儀なくされた。

 3曲とも若き日の作品である。
 1曲目、メンデルスゾーンのシンフォニア第3番は12歳で書かれた。10分足らずの小さな曲だが、少年の習作とは思えない風格と魅力に富む。
 早熟なフェリックス少年の作品を披露するため、メンデルスゾーン家は日曜日に自宅で家庭音楽会を開いていたそうだ。12歳から14歳までの間に書いた「シンフォニア」が13曲残っている。200年後に日本家屋のサロンで演奏されるとは想像もしていなかっただろう。

 早熟といえばコルンゴルトもひけをとらない。デビューしたのは11歳、自作のバレエ音楽がオーストリア皇帝臨席のコンサートで演奏された。
 「弦楽六重奏曲」Op10は19歳の時に発表した。約30分と比較的大きな作品。ウィーンで生まれ育ったコルンゴルトが持つ様々な音楽的要素がちりばめられている。後にハリウッドの映画音楽でも大成功するメロディーメーカーとしての才能もきらめく。
 コルンゴルトは長年、「映画音楽に転向した作曲家」とみなされ、軽んじられてきた。が、近年、バイオリン協奏曲やオペラ「死の都」が日本でも盛んに取り上げられる。この弦楽六重奏曲も、歴史的な悲劇を離れ、シンプルに「いい作品」として愛される価値がある。そう感じさせてくれる演奏だった。

 クラリネット協奏曲は毎回のEnsemble ZAZAの楽しみ。今回はヒンデミット。20世紀の複雑な音楽だけに、これまでのブラームス、モーツァルト、ウェーバーに比べると聴く側にも難易度が高い。自らもクラリネットを演奏した作曲家が28歳で書いたこの作品の構造や聴きどころを演奏前に吉田が説明してくれた。それを道しるべに耳を傾ける。
 しかし、音楽に浸るうち、あ、これはアタマを使い過ぎてはいけないと思った。弦に寄り添うクラリネットの音色を、ガット弦の温かく柔らかい響きを、外でさえずる鳥の声を、耳だけでなく五官を開いて感じることこそが座・座の楽しみなのだから。

 アンサンブルのメンバーは毎回、1週間ほど座・座にこもって音を合わせ、音楽をつくる。普通の演奏会の倍以上の時間を投入しているのだ。その積み重ねが彼らを確実に成長させた。かつてはガット弦の扱いにも、音を合わせることにも試行錯誤の苦労が見えたが、今は安心して楽しめる。頼もしい。
 そして、観客もまた成長している。ここに集う人々はほとんどがクラシックマニアではない。が、未知の音楽にも耳を開き、生き生きと楽しむ感性の持ち主が増えている。どんな風に聞こえたか、感想を交換するのが楽しい。
 そんな音楽家と聴衆が醸し出す親密な(しかし決して排他的ではない)関係が座・座の大きな魅力だ。

 360年を経た建物と庭園の風格、この財産を未来に開いていこうとする意思、企画の面白さと気骨......様々な力がはたらいて座・座という場の個性をつくり、成熟させてきた。
 ここに集う人々が、ここをつくる人々になる。
 きっと6年目からも新たな実験が続き、座・座は進んでいくだろう。

佐藤千晴(フリージャーナリスト)

いつもにも増して演奏者と観客の一体感が満ちた ヒンデミット作品を演奏する吉田誠

紅葉と風と鳥の声とともに聴く座・座の特等席 リーハーサル風景

出演者も参加者もほっとひと息、交流タイム。 出演者の本音を聴くアフタートーク。

撮影:m-louis