ながらの座・座

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大人ライブLive & Performance

古庭園大人ライブ Vol.31

カルテット・チクルスⅦ
朝・昼・夜の四重奏

2016.05.21(土)14:00/17:30〜お知らせ, 主催イベント, 大人ライブ, 記録・レポート

カルテット・チクルスⅦ

2016年5月21日(土) 14:00/17:30(開場は各30分前)

出演:ZAZA Quartet(佐藤一紀 谷本華子 中田美穂 金子鈴太郎)

定 員:各回40名
参加費:3,500円
会 場:ながらの座・座
   〒520-0035 滋賀県大津市小関町3-10(地図
   Tel&Fax: 077-522-2926 Mobile: 090-8576-7999(橋本)
申込み:お問い合わせフォームよりお申込みください。
    *未就学のお子さまの参加はご遠慮ください。

主 催:元・正蔵坊と古庭園を楽しみ守る会(ながらの座・座)
後 援:滋賀県 滋賀県教育委員会 大津市 大津市教育委員会 文化・経済フォーラム滋賀
助 成:公益財団法人 日本室内楽振興財団

☞チラシ:PDFファイル [10.9 MB]

カルテット・チクルスⅦ

今回はベートーヴェン・カルテット・チクルスからちょっと離れて春らしいプログラムでお送りします。いずれもZAZA Quartetらしい選曲で構成されたもの。この季節の時間の変化とあわせてお楽しみいただけるのではと思います。

また、「2016年 春〜初夏プログラム予告」でお知らせしていますように、5月1日(日・祝) びわ湖ホール「ラ・フォール・ジュルネ」キオスクステージにもZAZA Quartetが出演する関係もあり、今年のテーマと連動してこれらの曲を取りあげています。いずれにもご参加いただけますと、演奏の進化も実感していただける機会になるでしょう。

Special Report

 カルテットチクルスの第7回(2016年5月21日)はさわやかな五月晴れに恵まれた。「朝・昼・夜の四重奏」を聴くには最高の日。光と風がカルテットと共演するかのようだ。床の間には宝船の軸と深紅の牡丹。このプログラムからイメージしたという。

 午後2時開演の部を聴いた。
 いつもの4人がふわりと登場する。1曲目は「朝」、ハイドンの弦楽四重奏曲第78番「日の出」。この曲を演奏したくて「朝・昼・夜」のプログラムが生まれたという。
 演奏の前にチェロの金子鈴太郎が短く前口上。「ハイドンの『優雅』『退屈』という印象をぬぐい去りたい。ハイドンってけっこう過激なんです」
 
 第1楽章、第1バイオリンの谷本華子が小鳥のさえずるようなフレーズを弾くと、庭の小鳥もさえずる。第2楽章は夏の朝を思わせる物憂さが漂い、第3楽章の軽やかな3拍子は第2主題ですっと調子が変わり、重く、厚みのある響きに。再び戻った第1主題も力強さを増している。第4楽章はアップテンポ、細かい芸が求められる。演奏がますます熱を帯びた。
 
 「スパイスをきかせて演奏した。だって、当時の最先端の音楽だから」と第2バイオリン担当の佐藤一紀は終演後に語った。「日の出」はハイドンが55歳を迎えた円熟期、1797年の作品。時代は大きく動いていた。89年にフランス革命が起き、91年にモーツァルトが世を去り、ベートーベンはハイドンに師事するために92年にウィーンに移り住み96年にデビュー作を出版した。そんな時代背景を思うと、ハイドンの「優雅なだけじゃない」という仕掛けに耳が注意深くなる。
 手を伸ばせば演奏家に届きそうな距離で聴くから、CDや大きなコンサートホールでは聞き逃してしまう様々なニュアンスもダイレクトに伝わってくる。これが座座の楽しみ。

 2曲目は「夜」、今年が生誕100年に当るフランスの作曲家デュティユーの弦楽四重奏曲「夜はかくの如し」(1976)。金子が「谷本さんと同い年の曲」と紹介すると谷本が「何で言うのん!」。笑いが起きる。
 ばりばりの「現代音楽」である。ZAZAquartet にとっても、聴く側にとっても大きな挑戦。佐藤は「何百回も練習しないと弾けない曲をレパートリーに持っておかないとカルテットとして生き残れない」と挑んだ動機を明かした。このカルテットチクルスがあるたび、彼らはほぼ1週間を練習に費やす。だからこそ可能な選曲なのだ。
 演奏の前に佐藤がバイオリンで「星座の音型」の実演も交え、夜のイメージを約17分に凝縮したというこの曲の構造を解説した。「星空を見上げるように聴いて」という言葉を手がかりに、耳を傾ける。不穏な気配をたたえた部分にさしかかると、どこかでカラスが鳴き始めた。
 分かったか?と問われれば、正直、分かった、とは言えない。が、佐藤は言う。「ベートーベンだって作曲された頃は『現代音楽』で、誰も理解できなかったかもしれない」。繰り返し演奏され、繰り返し聴かれて、古典として成熟していくのだろう。

 ここで休憩。この日は金子の譜面台が注目の的だった。紙の楽譜ではなく、iPadが置かれ、足もとのペダルを踏んでページをめくっていた。
 紙の楽譜ならチェロの部分だけの〝パート譜〟を使うが、iPadはペダルで簡単に譜めくりができるので、四つの楽器すべてを記した〝スコア〟(総譜)を見ながらでも演奏が可能。楽譜はネットからダウンロードできるし、譜面閲覧用のアプリもあるのだとか。
 演奏で全国を飛び回るチェリストにとって、何種類もの重い楽譜を持ち歩かずにすむことも魅力だろう。

 後半は「昼」、ブラームスの弦楽四重奏曲第3番。デュティユーからちょうど100年前、1876年に初演された。
 「朝」と「夜」はスムーズに曲が決まったが、「昼」はあれこれ悩んだ末にこの作品を選んだという。「重い、暗い」が代名詞のブラームス。弦楽四重奏曲も第1番・第2番はその路線だが、第3番は明るく、ユーモアもたたえて「昼」にふさわしいから、と。
 第1楽章、明るいけれどブラームスらしい中低音の厚みもある。鶯の声が重なる。第2楽章の物憂さは、夕暮れ時に向かうこの時間帯によく似合う。カエルの声が、低音に反応したかのように聞こえてくる。第3楽章はビオラが鍵だ。このところ存在感を増している中田美穂が歌うように奏でた。締めくくりの第4楽章はバイオリンもビオラもチェロもそれぞれ美しいソロ部分があり、目立ったり、支えたり、4人が刻々と役割を変えてつくりあげた。

 カルテットチクルスも7回を重ね、音楽家と聞き手の関係もいい感じに馴染んできた。この空気もまた座座の財産。18世紀の「朝」、20世紀の「夜」、19世紀の「昼」。弦楽四重奏というジャンルの歩みに思いを馳せながら聴き、演奏家たちとも語り合う素敵な午後を過ごした。

佐藤千晴(フリージャーナリスト)

活け花:鈴木恵美

デュティユー「夜はかくの如し」のイメージに触発されて。
不穏な気配の牡丹の色、傾く花器、時代を経た床の壁の色。
活け花:鈴木恵美

愛知県の知多から来てくださった高松さん。今回は前日から泊り込みで庭掃除や開催準備のボランティアしながらフルに座・座を楽しみ、こんな感想を寄せてくださいました。

ボランティア・レポート
ZAZAカルテット(朝・昼・夜の四重奏)を聴いて(2016年5月22日 高松佳子)

昨年のEnsemble ZAZAで初めて「ホールの音響に頼らない生の音」を聞いたら余りにも素晴らしかったので今回また聴きに伺いました。
今回は朝と昼と夜の音楽ということでハイドン、デュティユー、ブラームス。
デュティユーは作曲家自身の曲を聞いたこともありませんでした。障子やガラス戸を取り払った座座ではお庭と弦の音が波紋のように広がります。弦楽四重奏というのはミニマムのオーケストラです。
前回はお庭のあちこちに散らばりで演奏してみえましたが今回は畳の上でした。聞く方も畳や縁側で聞くユニークな演奏会です。

弦楽四重奏の奏でる音とその時々の時間や空間で感じる音が全く違います。天気や風の音や鳥の声まで取り込んでの音楽ではホールでは味わえない。妥協をせず最善のものを作り上げていく姿勢が弦の間からダイレクトに伝わります。
今回は2回公演でしたので、2回違う場所で聞いてみました。1回目はお座布団でチェロの後ろ、2回目は椅子で第二バイオリンの後ろから。1回目は部屋の中を向いて聞くことになりました。

ハイドンの日の出はバイオリンが華々しく太陽を奏で、楽し気に始まります。リズム感と一緒に風に乗って解放感のなかで聴く側も自然と感じることが出来ます。残響のない世界で弾かれるハイドンは聴衆もコンサートの一部になります。どちらも素敵なんですが特に1回目のほうがハイドンの日の出に適したお庭の色だったように思います。

そしてデュティユーの夜はかくの如し。まず音階の説明がありました。ドレミファソラシドから違う音階を作ったデュティユー。「夜はかくの如し」というタイトルの他に各章ごとについているポエムのようなサブタイトルを目にしながら・・・。でも聞いている中でも少しわかるようになったのは2回目でしょうか。
こちらは弾いていらっしゃるうちにだんだん暗くなっていく2回目が特に素晴らしく感じました。
夜はかくの如し、は弦楽四重奏の曲自体が立体的で、椅子から外を自然と眺めていると暗くなっていくなかで聞こえてくる音色と池と石垣の外の光景がマッチしていきました。この曲は本当に癖になる、と思いましたが難曲すぎてなかなか聴けないのでこうやって紹介して頂けて嬉しかったです。

ブラームスの3番はこれぞ弦楽四重奏という曲。3曲のプログラムは巧妙で計算されていましたね。自分の耳は自然にデュティユーよりブラームスに慣れているんだということも感じました。外の明るさや温度も2回公演では変わりましたが、2回とも響きあう音が美しい。
ブラームスにしては明るい3番は4人の演奏者の力量が本当にしっかり備わっていなければ壊れてしまう音楽です。ヴィオラの少し切なげな音色が何とも言えない雰囲気で素敵でした。

演奏された部屋には、デュティユーに合わせて抽象画のような宝船という掛軸がかかり、少しだけアンバランスな芍薬が生けてありました。
終わった後にはハーブの浮いた紅茶とお菓子が用意されていて、何でも質問できる時間が用意されています。質問コーナーってなかなか演奏者と聴衆の間ではやりとりがありません。ここで思わず「ハイドンとかの四重奏はお外でも当時は弾かれていたんでしょうか?」と伺ったら、「たぶんそうだと思います。昔はホルンも外での合図用の楽器だったんですよ」と様々なことを教えてくださいます。

ながらの座座では聴衆である自分が漠然と聞くのではなく、音楽を感じる場所だと思います。良いコンサートホールで聴くのもいいですが、ただ漠然となんとなく聴いてしまうことも多い。
ここで私は心を広げてしっかりとカルテットを感じることが出来ました。多分、次の演奏会ではもっと変わっていけると思う。感じるものがどれほど人生を豊かにするのでしょう。
デュティユーをカルテットの皆様が進化したい一手と考えるように聴衆としても進化したい。
ながらの座座でのZAZAカルテットに魅了され、次の公演まで弦楽を勉強したいとさえ思いました。
本当に素敵な公演でしたので是非続けていただきたいと思います。

いつか過去に弾かれた曲ももう一度やっていただけたら。
年月が変わるごとに人も変わっていきます。変わってからもう一度弾いていただけたらとても嬉しいです。次はまた音色が変わると思いますから。聴く方も変わるでしょう。

ただただ、変わらない季節の中で音楽が溢れる光景が忘れられなくなりました。

軸・花・チェロ(Photo: m-louis) 室内(Photo: m-louis)


ハイドン:弦楽四重奏曲第78番変ロ長調op.76-4「日の出」


デュティユー:弦楽四重奏曲「夜はかくの如し」


ブラームス:弦楽四重奏曲第3番変ロ長調op.67