ながらの座・座

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大人ライブLive & Performance

古庭園大人ライブ Vol.18

カルテット・チクルスⅢ「L.v.ベートーヴェン弦楽四重奏曲全曲演奏会2」

2014.05.11(日)14:00〜/17:30〜(1日2回公演)お知らせ, 主催イベント, 大人ライブ, 記録・レポートsold out!!

カルテット・チクルスⅢ「L.v.ベートーヴェン弦楽四重奏曲全曲演奏会2」

2014年 5月11日(日) 14:00開演(13:30開場)/ 17:30開演(17:00開場)
※1日2回公演

出 演:Zaza Quartet 佐藤一紀 谷本華子 中田美穂 金子鈴太郎
定 員:40名(各回) 14:00の部完売! 17:30の部も残り僅かとなっております。
参加費:3,000円
会 場:ながらの座・座
    〒520-0035 滋賀県大津市小関町3-10(地図
    Tel&Fax: 077-522-2926 Mobile: 090-8576-7999(橋本)
申込み:お問い合わせフォームよりご希望の開演時間をご記入の上、お申込みください。

カルテット・チクルスⅢ「L.v.ベートーヴェン弦楽四重奏曲全曲演奏会2」

去年5月に全曲演奏会の第1回を行ってからもう1年。
思い切った構成で「えっ」と言わせたやんちゃな Zaza Quartet。
今度はどんな切り口で聴かせてくれるでしょうか。

お気づきと思いますが、今度のフライヤーはリバーシブルになっています。
演奏もフライヤーも一つのものという考え方です。
こんなところも含めてお楽しみください。

Special Report

今回、フリージャーナリストの佐藤千晴さんがライブレポートを書いてくださいました。


座座はチャレンジの場
〜Zaza Quarteのベートーヴェン全曲演奏シリーズ第2回

 気持ちよく晴れ渡った5月11日、Zaza Quartetのベートーヴェン弦楽四重奏曲全曲演奏会が開かれた。昨年5月に続くシリーズ第2回、曲目は演奏順に第5番、3番、4番。2回の演奏のうち、午後5時半からの回を聴いた。

庭の演奏者と観客 午後2時からの演奏は彼らが希望し、庭園で弾くサプライズコンサートになったそうだが、風が強まった夕方は、残念ながら屋内での演奏会。
 しかし、野外で演奏した経験は屋内でも生きた、とメンバーは話していた。「庭園では4人が少し離れて演奏したので、耳が開いた。自分の音が手もとの音だけでなく響きまで聞こえるから、ダーッと弾かなくなる」とチェロの金子鈴太郎。ヴァイオリンの谷本華子も「耳が開き、屋内でも聴く集中力が違った」という。
 和室の中央に円陣を組むように譜面台を並べ、4人が囲む。その周囲を観客が囲む。ふつう音楽家が観客に背中見せて演奏することはない。指揮者を除いては。
 庭園側の雪見障子は開け放たれ、弦の調べに風の音や鶯の声が重なる。音楽ホールにはない開放感だ。一方で和室はホールのように豊かな反射音が楽器の響きを助けてくれる空間ではない。そのせいか、立ち上がりは音が少しぎくしゃくした感じ。
 これが空間のせいばかりではなかったことは演奏後に種明かしされた。全員がガット弦を使っていたのだ。
 現在は金属弦が主流だが、その昔、弦はすべて羊の腸、すなわちガット製だった。湿度や温度に敏感で、すぐに緩んで音程が狂う。扱いにくいが、ベートーベンやモーツァルトの時代に使われていたガット弦の方が作曲家のイメージに近い音になるはず......19世紀初頭までの音楽を専門とする音楽家たちはそう考えてガットを愛用する。彼ら古楽奏者は楽器や弓のスタイルもできるだけ作曲当時に近づけるが、Zaza Quartetは弦だけをガットに変える。ふだんからガットを愛用しているのは金子のみだ。「これもチャレンジの一環。弱音がコントロールしにくいけれど、4人の音がピシっと合った時の快感は大きい」とヴァイオリンの佐藤一紀。
 高校球児が金属バットではなく、あえて飛距離は出にくい木製バットを使うのに似ている。真芯で球をとらえた時の感覚を磨くために。

 弦楽四重奏曲第1番〜第6番は若きベートーヴェンが自分の力を世に問うように送り出した作品群だ。20代の終わりに作曲、30歳を迎える1800年に作品番号18として6曲セットで発表した。Zaza Quartetは昨年5月のシリーズ第1回で第1、2番を取り上げている。
 6曲をまとめるスタイルは弦楽四重奏の父・ハイドンが好み、モーツァルトにもハイドンに捧げた6曲組みの四重奏曲「ハイドン・セット」がある。若きベートーヴェンもこの伝統にならった......とメンバーからの解説があった。なるほど、古典派的な様式も感じさせるが、それだけにとどまらない、のちの飛躍への予感も秘めた曲想だ。
 前半は第1ヴァイオリンが佐藤一紀、第1ヴァイオリンは谷本華子。佐藤と、隣に座る金子はときに体を寄せ合い、アイコンタクトをかわし、音のやり取りを求める意思が目に見える。谷本とヴィオラの中田美穂はややクールに黙々と内声部を受け持っている感じ。
 後半、第1ヴァイオリンが谷本に入れ替わると、今度は彼女がぐいぐいと突っ走り、佐藤ら3人が受けて立ち、支える趣きになった。役割が入れ替わるだけでこれだけ音楽が変わる。面白い。

演奏者と観客 昨年5月からこのカルテットでの演奏は3回目、他の室内楽も合わせれば座座への登場は5回目。この空間に慣れ、観客との距離の近さを「共に音楽をつくる」方向へと生かす手応えをつかんだようだ。
 4人は丸々一週間をこのプログラムに費やした。練習に4日、小さな演奏会を3日間で5回。オーケストラなら長くても3日間の練習である。リーダーの佐藤は言う。「いつもはお膳立てされたいい環境で弾くことが当たり前になっている。でも、自分たちでプログラムを考え、演奏の場をつくり、どんな環境でも最高のものを届けるチャレンジがないと音楽はルーティンに陥ってしまう。お客さんとのコミュニケーションをどう取るか、どう音楽を届けるかを真剣に考える精神を持ち続けたい。座座でのプロジェクトはそんなチャレンジなんです」
 音楽家のチャレンジに対して、観客はどう応えるのか? それは彼らの演奏を座座という場で聴き続けることだと思う。どう演奏したかだけではなく、どんな場をつくるのかにも目と耳を開いて。

(佐藤千晴 フリージャーナリスト)